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発表されたテーマ

    大空の会より    
子どもを亡くした親たちに捧げるテーマ

第1回〜第8回



2003・2・20 第8回大空の会のテーマ 「夢」現象について

2003・1・9 第7回大空の会のテーマ 『前世療法』的関わりについて

    2002・11・14 第5回大空の会のテーマ 自律訓練法の紹介 

2002・9・12 第3回大空の会のテーマ  アルファ波から起きる現象   


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 第33回〜第44回の大空の会のテーマ

 第21回〜第31回の大空の会のテーマ

 第10回〜第20回の大空の会のテーマ



第8回大空の会  2003年2月のテーマ

「夢」現象について

 
 よく亡くなった子どもが夢に出てきてくれたという話を聞きます。 聞けば、本当に亡くなった子どもに会ったよ
うで親はそのリアリティーさを訴えます。
 人は毎日、睡眠をとります。夢を見る時もあれば、見ない時もあります。
 夢・・・、夢とはいったい何なのでしょうか。 

 夢といえば、フロイト、ユングの名前が浮かんでくる人は多いのではないでしょうか。
 精神科医であるフロイトは、1890年頃から夢の研究をはじめたと言われます。当時の欧米社会では、遺伝的要因が精神的症状を起こすとされていましたが、フロイトは個人の深層心理が精神的症状を起こすという考えを打ち出しました。これは多民族社会であるヨーロッパで、その民族性による精神的症状であると烙印を押されていた人々を惹きつけました。フロイトは患者の心理を患者の見た夢で詮索し、その精神的的症状の治癒を図りました。
 そのフロイトに師事したのが、同じく精神科医であるユングでした。後にユングはフロイトと離反し、独自の夢分析による治療法を発表していきました。
 ユングは、フロイトの考えの他に外的要因も夢治療の要素としています。亡くなった人が会いに来る夢、予知夢、預言夢も外的要因に入ります。2001年にニューヨークのビルに飛行機が突撃した事件は、それ以前に世界の多くの人が予知夢で見ていたそうです。また、普通の人でも何かあった時、これは夢で見たことがあるようなといった予知、あるいは預言夢のような話は聞いたことがあるのではないでしょうか。 夢とは、その人一人の感情の問題でつくり出すものとした時、どうしてもそこに無理が生じます。何か向こうから来ているという外的要因も考慮に入れないとつじつまが合わなくなってしまいます。(そもそもユング本人が霊能者であり、彼の母方の家系は皆当たり前のことのように霊との交信を行っていましたので、彼にとって外的要因を受け入れやすかったのではないかと思います。)このユングのやり方は、師匠フロイトを超えて人々に支持され、今でもユングの夢治療のほうが重きをおかれています。
 そして、今もチューリッヒのC・G・ユング研究所では、ユングの夢の研究が行われています。

 しかし、夢の研究は近代にはじまったわけではありません。 古くは旧約聖書にも古代エジプトで夢占いが重要な位置を占めていたと書かれています。そして、ファラオ(王)の夢が政治を左右することさえありました。
 インドでは、ジャガデーヴァが『夢のかぎ』という夢の歴史を書いていますが、人々は太古から夢に関心を示していた様子が記されています。
 我国でも高僧、明恵上人の『夢記』が遺されています。
 『ギリシア神話と宗教史』の中では、夢は大きく分けてごく普通の夢と重要視すべき夢の二種類に分けられるとしています。 また、この重要視すべき夢も更に二つに分けられます。亡くなった人が来てくれるような外から来る夢とハイアーセルフ(自分の中の本当の自分自身)が語る自分の内面から来る夢です。 ここにユングの興味深い報告があります。ユングの調査によると、「未開人は、めったに夢を見ない。」のだそうです。未開の環境とは、誰と何を話しても構わない、秘密がない、文明人なら体裁が悪いと隠してしまうようなことも平気で話すそうです。自分の胸の内も周りはいつも知っており、正に筒抜けという環境だそうです。
 文明人とは、社会の体面のために生き、しだいに自分にさえも偽った自分を演じてしまっているという悲しい現状があるように思われます。そこで、自分自身の素直な情報を知らせるため、ハイアーセルフが夢という様式を用い自分に訴えかけるそうです。ユングは、患者の見たたくさんの夢の中からハイアーセルフからの夢を探し、何を訴えているか見定め、それを患者に知らせることによって精神的症状の治療に役立てました。

 古代ギリシアでも、夢は真の神託とみなされ、『目醒めている人々はただ一つの共通な世界をもっているけれども、眠りにおいては各自がそれから離れて自分自身の世界へ向かう。なぜなら、眠りにおいて魂は退き自分自身に集中する。』と、言われています。 
 これは、人の脳のアルファ波状態を指しています。睡眠時、人の脳は目覚めている時のベータ波からアルファ波を通り、眠りのシータ波へと移行します。亡くなった人やハイアーセルフはこのアルファ波をねらってやってきます。(アルファ波については、第3回大空の会のテーマをご覧ください) なぜなら、ベータ波だと自意識が多くて入る余地がなく、シータ波だと眠りに入ってしまいます。自意識を排除し、しかも脳が活動できるのがアルファ波です。 だから、亡くなった子どももこのアルファ波の時に夢に出てきてくれます。

 夢とは、亡くなった子どもに会えたりハイアーセルフに会える素晴らしいひと時とも言えます。
 今宵も、いい夢を見れたら・・・いいですね。

                                                       瀬野彩子

              参考文献
     『精神分析入門』 フロイト(新潮社)
     『夢判断』 フロイト(新潮社)        
     『自我論・不安本能論』 フロイト(人文書院)       
     『夢分析』 C・G・ユング(人文書院)
     『自我と無意識』 C・G・ユング (思索社)
     『無意識の心理』 C・G・ユング(人文書院)
     『ユングの人間論』 C・G・ユング (思索社)
     『ユング心理学概説』 C・A・マイヤー(創元社)
     『夢の治癒力』 C・A・マイヤー(筑摩書房)
     『夢と人間社会』 カイヨワ/グリューネバウム(法政大学出版局)
        



第7回大空の会  2003年1月のテーマ

『前世療法』的関わりについて

 全米ベストセラーとなり、人々の意識を大きく変えたと言われるマイアミ大学医学部精神科教授、ブライアン・L・ワイス著の『前世療法』(PHP研究所)。原書のタイトルは、『MANY LIVES,MANY MASTERS』(たくさんの生、たくさんの精霊たち)です。 今回は、この『前世療法』から亡くなった子どもとその親との関わりを探ります。

 1980年、キャサリンという27歳の女性がワイス博士の診察室を訪れました。彼女は大学病院の検査技師でしたが、神経症と強迫観念に悩み続けしだいに悪化、日常生活にも支障をきたすようになっていました。 
 ワイス博士は、キャサリンに週に1度か2度の割合で従来の様々な方法で治療してゆきました。しかし、彼女が良好に向かう様子はありませんでした。
 そこで、次の治療として催眠療法を使うことにしました。アメリカでは、1958年に催眠療法を医療に使用することが正式に認められており、心理療法に盛んに用いられています。 
 催眠療法でキャサリンの幼い頃に戻り、今の症状の原因を探しましたが、これもなかなか功を奏しそうにありません。 
 そこでワイス博士は、
 「あなたの症状の原因となった時まで戻りなさい。」と、指示しました。 
 するとキャサリンが語りはじめたことは、今生ではなく過去生のようでした。その過去生では、彼女は水の事故で亡くなりましたが、彼女の水に対する恐怖は薄らいでいきました。 
 その後、次々と過去生を見ていき、キャサリンの症状は次第に良くなっていきました。しかし、ワイス博士の中では過去生とは何かはっきりしないものがありました。

 ある日、催眠にかけられたキャサリンは突然ワイス博士にこう言いました。
 「あなたのお父様がここにいます。あなたの小さな息子さんもいます。アブロムという名前を言えば、あなたにわかるはずだと、あなたのお父様は言っています。お嬢様の名前はお父様の名前からとったそうですね。また、彼は心臓の病気で死んだのです。息子さんの心臓も大変でした。心臓が鳥の心臓のように、逆さになっていたのです。息子さんは愛の心が深く、あなたのために犠牲的な役割を果たしたのです。彼の魂は非常に進化した魂なのです。・・・彼の死は、両親のカルマの負債を返しました。さらに、あなたに、医学の分野にも限界があること、その範囲は非常に限られたものであることを、彼は教えたかったのです。」 
 キャサリンの語ったことは、すべて事実でした。ワイス博士の父親は心臓の病気で亡くなりましたし,息子も心臓の障害が原因で亡くなりました。また、娘の名前は父親の名前からとりまた。しかしそれらすべては、キャサリンが知り得るはずもないことでした。 
 驚きのあまりしばらく沈黙の時が続きましたが、ワイス博士は気を取り直して聞きました。
 「誰があなたにこんなことを教えてくれるのですか。」
 「マスター達です。マスターの精霊達が私に教えてくれます。」 
 このことを境にワイス博士は、催眠療法でキャサリンの過去生を追いながらマスター(精霊)達の言葉も聞いていくようになります。 
 キャサリンの催眠療法は18ヶ月間に及びました。彼女は地球上に86回生まれましたが、出てきた過去生は12回でした。ワイス博士に「またしても彼女は召使いだった。」と、言わせるほどそのほとんどが召使いの過去生で、有名な人物とは縁がありませんでした。

 はじめて見た過去生ではこんなことを言っていました。
 「建物に向かって、白い階段が見えます。柱のたくさんある白い建物で、前の方はあいています。入口はありません。私は長いドレスを着ています。・・・ごわごわした布でできた袋のような服です。私の髪は長い金髪で編んでいます。」
 「アロンダ・・・、私は18歳です。時代は紀元前1863年です。」 
 ワイス博士は何年か先に進むように指示しました。
 「私は25歳です。私にはクレアストラという名前の女の子がいます・・・彼女はレイチェルだわ。(レイチェルは現在の彼女の姪である。二人はとても親密な関係にあった。)とても暑いです。」 
 時をもっと進めて死ぬ場面に行くよう指示しました。
 「大きな波が木を押し倒してゆきます。どこにも逃げ場がありません。冷たい。水がとても冷たい。子どもを助けないと。でも、だめ。子どもをしっかりと抱きしめなければ、おぼれそう。水で息がつまってしまった。息ができない、飲み込めない・・・塩水で。赤ん坊が私の腕からもぎ取られてしまった。」
 キャサリンはあえぎ、苦しそうでした。突然、彼女の体がぐったりして呼吸が深く、安らかになりました。
 「雲が見えます。・・・私の赤ん坊も一緒にいます。村の人達も。私の兄もいます。」
 彼女は休んでいました。その人生は終わったのでした。 

 また、キャサリンがエリックというドイツ人だった時、英米との戦いで戦闘機を操縦し若くして亡くなりました。戦いに出向く前、幼い娘のマーゴットと時を過ごしていました。 
 ワイス博士は言いました。
 「マーゴットをよく見てください。彼女が誰だかわかりますか?」
 「あっ・・・ジュディだわ。」ジュディは現在、キャサリンの一番親しい友人でした。二人ははじめて会った時、一瞬にして親しみを感じよい友だちになりました。絶対的な信頼をもち、二人は口に出さなくても相手の考えていることや必要としていることがわかるほどでした。

 そして、ワイス博士に診てもらうようにとキャサリンに強く勧めた医師、エドワードは何度も彼女の過去生に出てきます。キャサリンとエドワードは、出会ってすぐ心が通じ合い、友情が芽生えたそうです。出てきた過去生での二人の間柄は、すべて親子でした。 
 途中、エドワードは亡くなりますが、彼は精霊となり、催眠療法中のキャサリンの前に何度も現れ、彼女にメッセージを残していきました。
 キャサリンとエドワードの関系はよほど近いものがあるようです。

 私達の亡くなった子どもも今生だけという短いものではなく、過去生でもまた未来の生でもいっしょなのかもしれません。深い関係の者同士が、そうやすやすと離れられるものとも思えません。 しかし、なぜ死という別れがあるのでしょうか。
 催眠療法中のキャサリンの口を通じて深く響きのある声のマスター(精霊)が言いました。
 「人間はこの三次元の世界にいつやって来て、いつそこを離れるのか自分で選ぶのだ。こちらの世界へ送られてきた目的を達成した時、我々は自分でそれを知る。自分の時間が終わったのを知り、死を受け入れるのだ。これ以上この人生では何も得ることができないと知るからだ。」
 「我々の使命は学ぶことである。」
と、しゃがれた声のマスター(精霊)も言いました。
 「命には終わりがない。そして、人は決して死なないのだ。新たに生まれるということも本当はないのだ。ただ異なるいくつもの場面を通り過ぎてゆくだけなのだ。終わりというものはない。人間はたくさんの次元をもっている。時間というものは、人が認識しているようなものではない。答えは学びの中にあろう。」
 延々と続く終わりのない命、親子という深い関わりのある者同士、また深い関わりを続けていくのではないでしょうか。死と呼ばれるものが別つことなど有り得ないのではないかと思います。 
                                                       瀬野彩子
 
                                 
        
第5回大空の会 2002年11月のテーマ
自律訓練法の紹介
 自律訓練法とは、1930年代にベルリン大学医学部教授、J・H・シュルツによって創案された自己催眠から自分自身をコントロールしようという方法です。
 今、自律訓練法はヨーロッパ、アメリカなどで盛んに行われていますが、中国にも自主訓練という名前で紹介されるようになりました。
 ストレスの多い現代社会を生きていくには、何よりも自分自身の力で自分のリラックスした心身の状態をつくらなければならないという状況に置かれているのではないかと思います。自律訓練法は、自己催眠から起こすセルフコントロール法から心身の回復、維持、増進を図ろうとするものです。
 1932年、シュルツは『自律訓練法』という本を世に出しました。ドイツをはじめヨーロッパ各地で自律訓練法は急速に受け入れられていきました。
 シュルツが、1970年に亡くなるまでに自律訓練法の研究は続けられ、『自律訓練法』の本は13回も増補改訂されました。
 その後シュルツの後を受け継ぎ、何人もの医学者が研究を重ねていきました。その中で、ルーテは自律訓練法をヨーロッパから世界に広げた功績者であり、応用範囲の拡大という実績も残しています。
 自律訓練法の標準練習として以下が主要素となります。
 {背景公式}「気持ちが落ち着いている」
 〔第1公式〕「両腕、両足が重たい」(重感練習)
 〔第2公式〕「両腕、両足が温かい」(温感練習)
 〔第3公式〕「心臓が静かに打っている」(心臓調整練習)
 〔第4公式〕「楽に呼吸している」(呼吸調整練習)
 〔第5公式〕「胃のあたりが温かい」(腹部温感練習)
 〔第6公式〕「額が涼しい」(額涼感練習) 
 まずは、寝た姿で行う自立訓練法を徐々にマスターしていきます。その後、座った姿で行う自律訓練法も練習します。この座った姿で行う方法は電車の中で座ってやってみるとか、どこかに行って緊張した場合など洋式トイレで行ってみるなどの応用もできます。
 また、自律訓練法の練習の時にバッハの『ゴルトベルク変奏曲』、『G線上のアリア』として知られる『管弦楽組曲第三番二長調』第二楽章、ヘンデルの『合奏協奏曲』、『オルガン協奏曲』などをバックミュージックとしてかけよりリラックスへと導くこともできます。
 自律訓練法の標準練習をマスターしたら、その上に更に特殊練習を重ねていきます。特殊練習とは、自分の悩み、欠点、気になっていることを翻す言葉を繰り返して自分に暗示をかけ、自己コントロールしていく方法です。この特殊練習こそ、自分の人生をより良くしていくものかもしれません。
 1956年に丸木舟で、1957年には折りたたみ式ボートで大西洋単独横断に成功したリンデマンは、シュルツの弟子であり医学、体育学を修めた学者でもありました。一度目は65日間、二度目は72日間の航海でしたが、転覆などにもみまわれ様々なパニックや不安、恐怖がありました。しかし、シュルツから学んだ自律訓練法でそれらに立ち向かい成功をおさめることができました。
 リンデマンは自律訓練法の特殊練習として「必ず成功する」、「進路を西に取れ」、単独横断なので「人に頼らない、助けを求めない」をずっと繰り返していたそうです。冒険に欠かせない自信をつける、依存心をなくす自己暗示をリンデマンは使いました。これは精神的な苦痛、不安の除去、更にはそれによる体力消耗をできる限り防ぐことになりました。
 アメリカ航空宇宙局(NASA)では、宇宙飛行士の訓練の一つとして自律訓練法を用いています。大西洋横断も孤独ですが、宇宙に出るのも母なる星、地球を離れるのですから孤独や不安が多いのではないでしょうか。毛利衛氏は自律訓練法を身につけ宇宙空間の中、助けられたということでした。
 シュルツは、精神分析を創始したフロイトとの会話で「人を治すことはできないとしても、植木屋がするようにその人の成長を妨げるものを除くことはできる。」と話しています。
 自律訓練法とは、その人を妨げるものを取り除き、その人がもっている可能性を純粋に発揮できるようにする方法のようです。           
        瀬野彩子
                            参考文献
                 『ストレス解消の決め手 自律訓練法』  佐々木雄一  (ゴマ書房)
                 『自律訓練法 不安と痛みの自己コントロール』 A・ミアース (創元社)
                 『自律訓練法の医学』 伊藤芳宏 (中央公論社)
                 『ストレスに克つ自律訓練法』 笠井仁 (健康ライブラリー)
                 『脳波の新世界』 稲永和豊 (青春出版社)              

 

第3回大空の会 2002年9月のテーマ 

        アルファ波から起きる現象      

  人が最も落ち着きリラックスした時の脳波は、アルファ波(アルファ波とシータ波の上の方のあたりともいわれますが、ここではアルファ波という言葉であらわす。)とされますが、が、催眠療法も、亡くなった子どもが夢にでてきてくれる時もアルファ波だそうです。
 また、霊能者、芸術家、スポーツ選手達、その道の人がその道を行う時もアルファ波が測定されます。
 果たしてこのアルファ波とは、いったい何物なのでしょうか。

 よく心電図という言葉を聞きますが、これは心臓が出す電気です。アルファ波は脳波の中の一つですが、脳波とは脳が出す電気でそれは波打つように変動していきます。
 脳波は大きく分けて5つに分かれます。

 ガンマ(γ)波  興奮状態の時     周波数 30 〜 40ヘルツ以上
 ベータ(β)波  普通に生活している時 周波数 14 〜 30ヘルツ
 アルファ(α)波 リラックスしている時 周波数  8 〜 13ヘルツ
 シータ(θ)波  浅い眠りの時     周波数  4 〜 7ヘルツ
 デルタ(δ)波  熟睡している時    周波数  1 〜 3ヘルツ

 19世紀末にドイツの生理学者、ハンス・バーガーが脳波を発見しました。
 1929年、ドイツの精神医学者、H・ベルガーによってはじめて人の脳波が記録されました。最初に記録した脳波を、ギリシャ文字の一番はじめの文字
αを当てアルファ(α)波としました。それ以外の脳波をベータ(β)波と呼び、アルファ波と区別しました。
 その後、デルタ(
δ)波の存在もわかってきました。
 1943年、イギリスの大脳生理学者、グレー・ウォルターによりシータ(θ)波が発表されました。theta(シータ)とは、ギリシャ語で「新婚夫婦が最初に性の営みを行う部屋」という意味だそうです。
 その後、エレクトロニクスの技術の進歩によって脳波の周波数も測定されるようになりました。

 アルファ波をほぼ自在に出せるという人によると、アルファ波を出している時は、頭の中をサラサラと小川が流れているような気がすると言います。
 確かにアルファ波が出ている時には、βエンドルフィンというホルモンが、脳から適度に流れ出ています。しかし、このホルモンはモルヒネと同じ働きがあり、多量に出ると感覚麻痺を引き起こします。でも、適度にβエンドルフィンが出ていると、適度な感覚麻痺によって人間のさまざまな雑念を抑えてくれる働きがあるようです。
 シータ波、デルタ波に入ると眠りに入ってしまいます。世欲のことを考えている時はベータ波、怒ったり驚いた時はガンマ波です。世欲と眠りのちょうど中間のいいところがアルファ波のようです。アルファ波になると、本来の無垢な自分に近い状態になるといっても過言でないと思います。

 よく夢で亡くなった子どもが出てきてくれたという話を聞きます。(来年2月のテーマは”「夢」現象”です。)
 誰でも眠りに着く頃、目覚める頃、脳波は必ずアルファ波を通ります。起きている時なかなかアルファ波になりにくいタイプの人には、この眠りの前後のアルファ波をねらって、亡くなった子どもからメッセージを伝えてくることもあるようです。
  将棋名人やスポーツ選手、芸術家など彼らが自分の仕事をしている時の脳波を測定した人はたくさんいます。彼らの調子いい時には、仕事をやりはじめてすぐにアルファ波になるそうです。
 自分の得意分野を行っている時、我を忘れ夢中になることで世俗の雑念をおさえアルファ波となり、自分本来のエネルギーでその人にその人以上のことをさせるのかもしれません。
 アメリカの科学者、ブラッド・バーガーが、ノーベル賞受賞の科学者を対象に、いつノーベル賞にいたるような仕事のヒントを思いついたかという調査をしました。それによると87パーセントの科学者が、研究室で真剣に考えている時ではなく、のんびりとくつろいでいるひとときになんとなくヒントが湧いてきた、あるいは寝床の中で思いついたという調査結果でした。
 湯川秀樹博士の中間子論はベットの中で考え出され、福井謙一博士はよく明け方に起きて枕元のメモ帳に鉛筆を走らせたそうです。
 しかしどんな人でもボーッとしている時や我を忘れて自分の好きなとこに没頭している時にはアルファ波が計測されます。
 脳波をアルファ波にするのを少しでも自分でコントロールする方法として、自律訓練法(大空の会、11月のテーマで予定)があります。これはベルリン大学のシュルツ教授(神経生理学者)が、自己暗示による身体的変化を起こしてアルファ波にする方法として考案しました。
 また、禅が脳波をアルファ波にし、家で毎日心静かにお念仏をあげる人、写経をする習慣のある人が、それをはじめればアルファ波になっているという報告もあります。
 しかし、最も簡単なのは、ボーッとしている時にアルファ波を出しているというタイプ。確かに眠りの前のまどろみかけている時、寝起きのボーッとしている時は誰でもアルファ波になっているのですから、昼間の生活の中にそれを自在にもってくることができれば、アルファ波をコントロールしていることになるのではないでしょうか。

 私達は起きている時、ベータ波で生活をしています。ストレスの多い現代社会ですので、ある時はガンマ波も出てくるかもしれません。そのような中、少しでもアルファ波の時間を多くとってリラックスしたいものです。
 毎日何か一つ、その人それぞれに合ったアルファ波になるような事を見つけ、行っていけば、心身ともに癒され、健康のためにもいいかもしれません。
                                                                                                                                                          瀬野彩子
               参考文献
   『アルファ脳波革命』 志賀一雅 (ゴマ書房)     
   『驚くべきストレス革命[脳波]の新世界』 稲永和豊 (青春出版社)
   『脳波の旅への誘い』 市川忠彦 (星和書店)        
   『座禅の科学・脳波から見たそのメカニズム』 平井富雄 (講談社)
   『α波革命』 村井健司 (高輪出版社
 
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