<大空の会 会長思話>
子どもを亡くすということ、それは大変過酷な体験です。母親にとって受胎し自らの中で育み、産みの苦しみを経て育ててきた子は自分の身も同然です。父親にとって庇護すべき我が子は、自分の分身ともいえる愛しい存在です。その子が思ってもいない死を迎えるとは誰が思うでしょうか。突然の死、長い間の看病の後の死、いろいろな死があります。 また、赤ちゃんから大人まで年齢もさまざまですが、どの死も親は言い知れない程の激しい衝撃と強い自責の念を受けます。
今、周りにわかってくれる人は非常に少ないのが現状です。子どもを亡くした悲しみは、子どもを亡くした親でないとわかりません。どんなにたくさんの人の死を看ているドクターでも、どのようなすばらしい識者でも経験がないとその思いの境地に至りません。そこで会をつくり、子どもを亡くした親同士でセルフサポートすることが、必須となります。
セルフサポートの会とは、まず周りの人には言えない胸のうちの思いを吐くマイナス面が必要です。そして、マイナスがあるならプラスもないと人の心のバランスはとれません。 悲しみを分かち合うだけでなく、私達の中で限りなく疑問符の追う子どもの死の意味に近づき、人の生死の意図を学べるようなプラス面も大変重要な要素です。
大空の会では、マイナス面としてはじめにお一人ずつのスピーチ、ティータイムとフリート−キングを挟みプラス面テーマの時間にはいります。毎月企画されているテーマは、様々な方角からの情報を取り上げ考察、あるいは外から講師を招くなどして行っています。
また大空の会には、貸し出し図書や貸し出しテープなどがあります。それらは無料で行い、利用しやすいよう必ず会の時には並べて置いてあります。 この貸し出しテープは、思わぬ効果が出てちょっとびっくりしています。会員達によると「自律訓練法」と「癒しの瞑想」のテープは、よく眠れるそうです。睡眠薬がいらなくなったという人もいます。また、「ハイアーセルフに会う」のテープを聞いて本当に何人もの人が夢で亡くなった我が子に会えたと喜んでいます。夢で子どもに会えると、精神的にひとつ落ち着くそうです。
そして、成人に達していないような兄弟がいる場合、遺された兄弟の精神的なフォローも必要となります。親は子どもが亡くなると、亡くなった子のことで頭がいっぱいになってしまいます。たとえ外見上、普通に接していても子どもは親の心情を敏感に察しています。遺された兄弟は、自分の兄弟を亡くした悲しみと親の悲しみ、そして親の気持ちが自分の方を向いてくれなくなった寂しさなど何重もの悲嘆を背負います。これまでの経緯からすると、親が遺された兄弟のことを考えられるようになるのは、同じ体験者同士で思いを分かち合ったり、亡くなった子どもに夢で会えたり、書物や講義、講演などでその存在に安心感がもてた時のようです。ふと遺された兄弟を見た時、その傷ついている心に驚くことさえあります。また新たな親の葛藤となり、遺された兄弟にも自責の念をもつようになります。しかし、それから遺された兄弟の精神的フォローははじまります。大変難しいことですが、できれば一刻も早く亡くなった子どもに対して安心感を得ることは、遺された兄弟にも親自身の健康、社会的な面においても非常に大切なことと言えます。
子どもを亡くした親達は、こうした経験から切磋された心と琢磨された思考をもつようになります。子どもを亡くしたことのない人達には経験し得ないようなすばらしく生きていく勇気と権利を与えられているのかもしれません。
瀬野彩子